「~てやる」「~てくれる」「~てもらう」(ベネファクティブ1)文の構成を解明する上で重要な指摘 である山田(2004)では、何らかの影響を受ける間接
「~てやる」「~てくれる」「~てもらう」(ベネファクティブ1)文の構成を解明する上で重要な指摘 である山田(2004)では、何らかの影響を受ける間接的な対象、いわゆる「受影者」という概念を導入 し、受影者の有無といった観点から「~てやる」を捉え直している。山田(2004)は「~てやる」を「恩 恵型テヤル」と「非恩恵型テヤル」2に大別し、また「非恩恵型テヤル」を「受影者存在型非恩恵テ ヤル」と「受影者非存在型非恩恵テヤル」に分けた。この分類を豊田(1974)の用法に関する考察とす り合わせてみると、「受影者存在型非恩恵テヤル」がマイナス利益を表す「~てやる」に対応し、「受 影者非存在型非恩恵テヤル」が意志を表す「~てやる」に対応しているように見える。つまり、受影 者の参与度合いが薄まれるにつれ、「~てやる」は次第に恩恵から非恩恵へ、非恩恵から意志へと、 意味が変わっていく。間接的に影響を受ける「受影者」という概念の導入が、多様な現象を呈する「~ てやる」を系統化する上の重要な示唆となった。ただし、「絶対ブランド校に受かってやる」のよう1 山岡政紀が『日本語のベネファクティブ―「てやる」「てくれる」「てもらう」の文法』の書評でこの 3 つ受益補助 動詞を用いた構文をベネファクティブとまとめている。