2先行研究について 日本語の敬語が長い歴史をもっている。その敬語についての研究が昔から今日にいたるまでいろいろある。まず、敬語の歴史につい
2先行研究について
日本語の敬語が長い歴史をもっている。その敬語についての研究が昔から今日にいたるまでいろいろある。まず、敬語の歴史については、さまざまな研究があるが、金田一京助が唱えた敬語発達の段階説が絶対敬語から相対敬語へという大筋がみな認められている。第一期タブーの時代、第二期絶対敬語の時代、第三期相対敬語の時代と称した。
現代においては、敬語の研究がさまざまな様子を呈している。国立国語研究は、地域社会における敬語の実態調査として、昭和27、28年の二年度にわたって三重県上野市愛知県岡崎市で、考えるいろいろな包括的な調査をした。敬語行動、敬語意識の実態についての社会的調査を中心に、全国各地で行った調査を加えて、この調査についての調査の報告書としては、『敬語と敬語意識』が出ている。昭和38年度に、国立国語研究は島根県松江市で「国民各層の言語生活の実態調査」を実施した。『待遇表現の実態』を発表した。
その後、敬語を敬語表現の中に位置付けて、言語表現以外のものも含めて、いわば敬語行動全体の中で敬語を把握することもある。例えば、『日本語4敬語』(1977年)、『敬語表現』(1998年)、『朝倉日本語講座8敬語』(2003年)などの本でそれを触れている。
3敬語表現の構成
3.1研究方法と研究範囲
以前は敬語分類にだけ集中し、単なる敬語の語彙についての研究から文法的体系の構築への研究が多い。本稿は従来の敬語に関する研究とはやや異なった観点から論じたいと思う。本稿では、現在の共通日本語の敬語表現を考えていくことを目標として、先学の研究に導かれつつ、敬語表現に関する体系的な知識を整理しておくとともに、表現主体が人間関係や場の状況や話題などに対する配慮に基づく表現として、その表現しようとする敬語意識を探究しようとする。
3.2素材敬語
素材敬語については通説を参照して下の三つに分ける。
⑴尊敬語――表現主体が上位者として遇する人物の事物、動作、状態などについて言う敬語。そこで話題になる人物そのもの、またはその人物に属する物事、あるいはその人物の動作状態性質などを高めて表現するものである。
⑵謙譲語――表現主体が上位者として遇する人物に対する者(表現主体自身をも含む)の事物動作状態などについて言う敬語。一般的に言うと、そこで話題になる人物そのもの、またその人物に属する人やものごと、あるいはその人物の動作状態などを低めて表現して、その結果、その相手方が話題の人物より上に位置するものとして扱われるものである。